"ガールミーツデスソード"--マーガレット二次創作-- デス剣奨励小説 --------- 目次 ------------ 1.加護衝撃のエリーナ 2.デスマリーズメモリーズ 3.幻獣ハイパーウォール様 4.デスエリーナ --------------------------- 昔のお話。 ある少女とデス剣の出会いの物語。 ////// 1.加護衝撃のエリーナ ////// 物語はどこにでもある宿屋兼業の酒場から始まる…。 広い酒場の中で、腰から剣を下げた金髪隻腕(せきわん)の女性が、 屈強な酔っぱらいに絡まれている。 「よう、姉ちゃん。俺ッチと一緒に酒飲もうぜぃ」 「ちょっと、どこ触ってるのよ!離しなさいよ!!」 「ちょっとだけらろぅ、いいじゃねえかぐぇへへへ」 「離せって行ってるでしょ!!店主ーっ!この人どうにかしてよ!!」 女性が店主に助けを求める。だが、現実は非常だった。 「あっ、はい、ウインナー三人前ですね。  はい、申し訳ありません。はい、すぐお持ちしますので。はい」 店主は店の対応に追われ、それどころではなかった。 「はーなーせーーー!」 女性は必死に抵抗しているが、片腕ではうまく男を突き飛ばすことができない。 周りではその様子を、 ハラハラと見守る者、無視を決め込む者、興味深そうにニヤニヤする者、 …と、様々だったが、女性を助けようとするものはいなかった。 ガシャッッ そのとき、それを見かねたのか一人が席を立った。 赤い鎧に緑の髪。腰には一振りの剣。体格からして女のようだ。 その女はズカズカとチンピラに近づいていく。 「…あなた、うるさいわよ。メシが不味くなるから消えて」 「あぁん、なんだぁ、テメェはよぅ。名を名乗れぃ」 「エリーナ」 「…なんだってぇ?」 「剣師エリーナ。…加護衝撃のエリーナよ」 「ざけんなよぅ、ぶちころされてぇのかぁ!」 「死ぬのはあなたよ」 一触即発の空気にあたりがざわめく。 「おおっ!ケンカかっ、やれやれーい」 「おい、エリーナって剣師知ってるか?」 「ぜんぜん知らんな、ルーキーだろ」 「ぶち殺せぇー!」 「お客様ー、店内での私闘はお止め下さい、お客様ーっ」 「誰か賭けしようぜ!、俺は男に金貨5枚!!」 「お嬢ちゃん。俺ッチのイカしたアプローチを邪魔したこと、地獄で後悔しなぁ!!」 酔っぱらいが剣を抜く。 それを見て少女もゆっくりと剣を抜いた… =============================================================== Battle!! エリーナ   5/1/0/3速護護衝衝 酔っぱらい 20/2/0/2斬斬 (戦闘結果は各自脳内保管) =============================================================== 勝負は一方的な展開だった。 酔っぱらいの繰り出す力任せの斬撃は、少女によって簡単に受け流された。 そして少女は風をまとった剣により男の体勢を的確に崩して行く。 十合ほど剣を合わせたころには、男はボロ雑巾のようになっていた。 膝をつく男の喉元にエリーナが剣を突きつける。 「まだやる?本当に死ぬわよ」 「…いや、やめとく」 酒場に歓声が響く、 「嬢ちゃんイカスぜー!」 「やめるなー、殺せー!」 「やった、大穴きた!」 「ぎゃー、今月の生活費がー」 「お客様ー、店の修繕費払ってくださいよ、お客様ー!」 「ふぅ…」 エリーナが自分の席に戻ると、 先ほど絡まれていた女性が横に腰掛けていた。 「えへっ、ありがと、エリーナ。アンタのこと気に入っちゃった」 「あなたも災難だったわね」 「まあねっ、でもアンタと会えたからプラマイゼロよ」 女性は嬉しそうに続ける。 「ねえっ、あなたこの街初めてでしょ。  今日のお礼に明日街を案内してあげるわ」 「そうね…わかった。よろしく頼むわ。えーっと、あなたの名前は…」 「デスマリー。"元"剣師のデスマリー・ゴールドよ。よろしくね、エリーナ」 ////// 2.デスマリーズメモリーズ ////// 次の日、エリーナはデスマリーと共に街を散策した。 料理がおいしい店から始まり、腕のいい鍛冶屋、安い雑貨屋など色々な所を見て回った。 そして最後に丘の上にある巨大な建物に辿り着く、 「で、ここが剣師にとって一番重要な場所」 「ここか…」 それは円形の形をした巨大な闘技場(コロシアム)だった。 「いいコロシアムね」 「でしょ、この近くでは一番大きいはずだからね」 へへん、とデスマリーは誇らしげに語る。 「そういえば、デスマリーはどんな剣師だったの?」 「ん?私?私は加護デス剣師だったよ」 「デス剣ねえ…」 「ん?なによ、エリーナはデス剣の良さが分からないの?」 「いや、そういうわけじゃないけど」 エリーナが言葉を濁すとデスマリーはデス剣について語りだす。 「確かに私も扱い辛い剣だとは思うけどね。  この街じゃ私しか使ってなかったし…。  でもね、デス剣が決まったときの爽快感って本当に気持ちいいんだから」   そういうとデスマリーは右手一本で器用に剣を抜く、 これが彼女の剣なのだろう、見た目は峰の部分がギザギザになったブロードソードといったところだ。 「手入れが行き届いたいい剣だな」 エリーナは率直にそう述べた。 「まあね、つい最近までバッタバッタと対戦相手をなぎ倒してた、私の愛剣だもの」 それを聞いてデスマリーは嬉しそうに笑う。 「何で剣師を辞めたんだ?」 その問いに、デスマリーは肘までしかない左腕を掲げ苦笑いをしながら応える。 「鏡の剣をもらっちゃってね、剣が振れなくなっちゃったのよ」 「そうか…」 デスマリーは剣を鞘へと収める。 「…ちょっとしんみりしちゃったね。  そうだ!コロシアムの近くにこの街が一望できる場所があるの。  そこにいって気分転換しましょ」 「すまない、悪いことを聞いたな」 「いいっていいって、その経験も含めてデスマリー(わたし)なんだから」 コロシアムの周りをぐるっと五分ほど歩くと、街が一望できる場所にでた。 「…いい眺めだな」 「でしょ。見てみて、あそこが昨日私たちが出会った酒場だよ。で、あそこが鍛冶屋で…」 「ねえ、デスマリー」 「ん?なに?エリーナ」 「あの巨大な壁は何?案内してもらった記憶がないんだけど」 「壁?そんなものあったかしら?」 「ほら、アソコよ、街の端の方に見えるでしょ」 「ん、確かに有るけど…あんな物この街にあったっけ?」 デスマリーは首をかしげる。そのときだった。 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…… 「動いた!」 「動いたー!?」 その巨大な壁は家屋を踏み倒しつつ前進を始めた。 「えっ、何?どーなってるの」 デスマリーはパニクッた。 「これは…まさか!」 コロシアムの方から男が二人のほうへ駆けてくる。 男は二人の近くまでくると、巨大な壁を見据えながら言った。 「おい、大変だ!!今入った情報によると、あれは幻獣だ!!」 「なんですって!」 「やはりか!!」 エリーナは壁に再び目を向けると不適に笑った。 ////// 3.幻獣ハイパーウォール様 ////// 幻獣、それは特殊な能力を持った化け物。 幻獣、それは一種の自然災害。 幻獣、それは極(ごく)相性の良い剣師でないと勝てない究極の皇帝(エンペラー)。 すべての加護耐久型剣師の祖と言われるウォール(50/0/0/0)という壁がある。 一部の地域では神格化されている地域もありウォール様と呼ばれるほどだ。 かの幻獣はその姿を模していた。ただし大きさはその10倍ほどあった。 「でかっ!」 「でかいな…」 人々が逃げ惑う中、 エリーナとデスマリーはその巨大な壁へと近づいていった。 近くに寄るにつれ、何人もの剣師が傷つき倒れているのが見える。 「何だかエリーナの構成じゃ無理そうな相手だね…」 「それはどうかな」 「んん?どういうこと?」 エリーナはデスマリーの目をみて言う。 「…気合でなんとかしてみる」 そういうとエリーナは巨大な壁に向かって走って行った、 「あっ!馬鹿っ!無理だって!エリーナーーー!」 …移動中… エリーナは巨大な壁に対峙した。 「フフフ…、これで私も幻獣殺しの仲間入りか」 そして、熱のこもった目で壁をにらみつけ、叫ぶ。 「さあ、来い!!アタシの衝撃剣でその巨体を止めてやる!!」 ========================================================== Battle!! エリーナ   5/1/0/3速護護衝衝 幻獣ハイパーウォール様(HWS)500/0/0/0(途心100p) 【特殊能力】 「ハイパープレッシャー(体当たり)」 HWSとの戦闘は10ターンで終了する。 また、近隣の建物や地形を破壊する。 --------------------------------------- 設定: ウォールを超えたウォール。 全高50m、全幅100m、自走できる(秒速5m程度)。 「(能力値全て2桁以下か…ゴミめ)」 ---------------------------------------- ========================================================= 「衝撃剣!衝撃剣!衝撃剣!衝っ撃っけーん!!」 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…ドカッ!! エリーナは暴走する壁に派手に弾き飛ばされた。 「ぬあぁぁぁぁあっ!!」 「ああっ!エリーナがひき逃げられたー!」 死屍累々、阿鼻叫喚の地獄絵図。 HWSの通った後には、跳ね飛ばされた剣師の山と、踏み潰された家屋の残骸が積み上がって行く。 「エリーナ!大丈夫!?」 デスマリーがエリーナを助け起こす。 「アタシじゃ無理だ…、誰か魔法剣とか加熱重撃とか使える剣師を呼んで来て」 「無理よ!あれだけ大きいと魔法剣でも削りきれないし、加熱仕切る前に弾き飛ばされちゃうわ」 「5/0/0/2熱魔魔魔魔魔重とかなら勝てそうだ」 「そんな極端な剣師そう簡単にいないわよ!!」 「それもそうだな…」 HWSの暴走は続く、 「ちょっともう一回行ってくる」 エリーナはフラフラと立ち上がると、HWSの進行方向に向かって走り出す。 「エリーナ、無理だって!剣師にクリティカルヒット(乱数による攻撃力増加)は無いのよ!!」 しかし、デスマリーの叫びもむなしく、エリーナは無策で二戦目に挑んで行った。 …移動中… HWSの進行方向に陣取り、エリーナは呟く。 「さて、この辺かな」 諦めとも覚悟とも取れる口調で、呟く。 「剣師は負けると分かっていても戦わなければならない時があるのよ」 誰にとも無く呟く。 「成長要素有りの二回戦で逆メタを見つけてしまった時だとしても…ね」 本当に誰に向かって呟いているのか。 ヒューンッ、ザスッ。 そのとき、エリーナの目の前に何かが飛んできた。 「…これは!!」 「エリーナ!その剣を使って!!」 デスマリーが遠くから叫んでいる。 「思いのこもった大切な剣だけど、エリーナにあげるわ!」 「デスマリー!いいの!?」 「いいって、でも後で一杯おごりなさいよ!」 地面に刺さった剣を引き抜く、 「うぐっ…」 手に取った瞬間エリーナの体から力が抜けていく。 「アタシの攻撃力を吸い取っているのか…」 少しずつ剣に黒いオーラがまとわりついていくのが見える。 エリーナは剣に向かい呟く、 「頼んだぞ」 そしてまだ遠くに見える壁を見据え、叫んだ。 「勝負だ、幻獣!!」 ========================================================== Battle!! エリーナ(デス剣装備)5/0/0/3速護護衝衝死 幻獣ハイパーウォール様(HWS)500/0/0/0(途心100p) 【特殊能力】 「ハイパープレッシャー(体当たり)」 HWSとの戦闘は10ターンで終了する。 また、近隣の建物や地形を破壊する。 --------------------------------------- 設定: ウォールを超えたウォール。 全高50m、全幅100m、自走できる(秒速5m程度)。 「(能力値全て2桁以下か…ゴミめ)」 ---------------------------------------- ========================================================= 壁が一定の速度で家屋を踏みつぶしつつ暴走する。 「(6…)」 距離は十分。 「(5、4、3、2、1…)」 剣に込めた気迫が黒いオーラとなり刀身にまとわりついていく。 ゴゴゴゴゴ… 壁はすでにエリーナの目前まで迫っていた。 エリーナはデス剣を上段に構えなおす、 「破滅の刃に死を…、くらえっ!デス剣っ!!」 エリーナは手の中で剣を翻し、そのギザギザした背を壁に叩きんだ。 ゴゴゴゴゴゴ…ゴゴ…ゴ…ゴ……。 そして、…壁は動きを止めた。 「安心しなさい…」 動かなくなった壁にエリーナは背を向ける 「…みね打ちよ」 デス剣を打ち込んだ箇所から、壁に黒い線が走る。 黒い亀裂はガラスが割れるように一瞬で広がり、各所から砂がこぼれ… 壁は、静かに崩れ始めた。 「ぐぅっ…」 ガランッ エリーナはデス剣を手から落とすと ガクリとその場にひざを突く。 「エリーナッ!大丈夫っ!?エリーナッ!」 遠くからデスマリーの声が聞こえる。 膝が笑っている。手が震えている。目の前が真っ白になる。 「……」 恐怖ではない。 「……」 死の剣を振るった反動で体にガタが来たわけでもない。 「(これは…)」 「(これはッ……)」 ザバーンッ 「ぬわぁぁぁぁぁぁああああ」 「エリーナーーーーッ!!」 エリーナの背で壁が急に弾けた。 そして、先ほどまでゆっくりと崩れていた壁は、 砂の津波となってエリーナを飲み込んでいった。 …こうして、この街の幻獣騒動は幕を閉じた。 ////// 4.デスエリーナ ////// 酒場兼宿屋の一室で、エリーナがベッドに横になっている。 その横ではデスマリーがかいがいしく世話をしていた。 「エリーナ、大丈夫?リンゴ切ったげようか?」 「いや…大丈夫よ。アタシのケガはたいしたこと無いって。自分で斬るからそこにおいといて」 「そう?何かあったら遠慮なくいってよね」 「ええ、ありがとうデスマリー。アタシは寝るからあなたも自分の部屋で休んで」 「そうね。わかったわ、幻獣殺しの英雄さん」 「ああ、また明日」 「じゃあまた明日ね」 ギィィッ、ガチャ デスマリーが部屋を出て行き、エリーナ一人が残った。 「さてと…」 カチャリ エリーナはドアの前に行き鍵をかけた。 そして、左手に先ほどのリンゴを持つ。 「…………」 右手にはデス剣を構えて。 「破滅の刃に死を…デス剣(小声)」 リンゴはバラバラになった。 ゾクゾクとエリーナの体に電流が走る。 「くっ……こ・う・こ・つ(はあと)」 エリーナがHWSを破壊したときに感じた感情。 それは相手のHPを一撃で吹き飛ばす爽快感から生じるカタルシス、…カタルシスの絶頂であった。 「破滅の刃に死を…デス剣(小声)」 ゾクッ 椅子はバラバラになった。 「破滅の刃に死を…デス剣(小声)」 ゾクゥッ 机はバラバラになった。 「破滅の刃に死を…デス剣(小声)」 ゾクリッ 壁に掛けられた絵はバラバラになった。 「口上がめんどくさくなってきた…デス剣(小声)」 ゾクゾクッ ベッドはバラバラになった。 「デス剣!デス剣!デス剣!デス剣ッ!!(あくまでも小声)」 ……… …… … 次の日。 デスマリーがエリーナの部屋をノックする。 「おはよー!エリーナ!いい朝だよー」 しかし返事は無い。 「エリーナ?」 デスマリーがドアノブに触れるとドアはあっけなく回った。 「もう、無用心なんだから…」 デスマリーはそういいながらも楽しそうにドアを開ける。 「こらっ、とっとと起きなさいよって…何これーっ!!」 そこには全ての家具がバラバラに砕かれた、見るも無残な光景が広がっていた。 「困りますねえ、お客さん」 「ひいっ!!」 デスマリーの背後にいつの間にか宿の主人が立っている。 「いえっ、私じゃないんです!これは私の友達が…」 「ふむ。で、その友達はどちらへ?」 「あ、あはははは…どちらでしょうねえ? じゃ、私はこれでっ!!」 そういうとデスマリーは脱兎のごとく走る。 「あっ、逃げるなっ。店員ども!あの女を追えー!!」 デスマリーは大勢の店員に追われながら大通りを走る。 「エリーナーーーーーッ!!恨むわよー!」 … 数年後。ある街の路地裏で、男が赤い鎧の女に話しかけられている。 「…ねえ、そこのあなた。アタシにデスられてみない?」 男が戸惑うのを見て女は妖艶に笑う。 「フフフ…デスり甲斐のありそうな体ね。  さあ、かかって来なさい。アタシはエリーナ、…デスエリーナよ」 -- 終 --